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ゴローニャ
 端末で時間を確認する。そろそろお昼だ。
「ここらへんでご飯にしよっか」
 端末をもう一度見て、現在地を確認する。日が落ちる前に、余裕をもって山小屋に入れる。予定通りのいいペースだ。ちょうど、開けた場所にちょっと小高い岩があるので、その上でお弁当を食べることにした。
 モンスターボールからグレッグルとタマザラシを呼び出し、周囲にポケモンがいないか確認。ご飯を盗られたら大変だ。
「よし」
 一人と二匹で確認を終え、小高い岩の上に腰を下ろす。丸みを帯びた岩の上で三名並んで、それぞれおにぎり、昆虫系ポケモンフーズ、魚系ポケモンフーズにかぶりついた。
「おいしいね」
 テトが話しかけると、グレッグルとタマザラシも笑って頷く。グレッグルはおにぎり型に成形されたフーズを、テトと同じように両手で支えてちまちまとかじっている。タマザラシは魚の干物にしか見えないそれを、豪快に丸呑みだ。テトもおにぎりをかじった。塩味の効いた昆布が、汗をかいた体に気持ちいい。
 食事の後を片付けたら、食休みだ。テトは丸こい岩の上に寝転んだ。グレッグルとタマザラシも、真似して寝転がる。
「地震!?」
 タマザラシが岩から転げ落ちた。体を揺するような横揺れに、テトも飛び起きて端末を確認する。コロコロ転がったタマザラシはグレッグルが回収した。
「地震速報は出てないや。結構大きいと思ったのになあ」
 はずみでタマザラシが転がる程なのに。テトは首をひねりながらも、食休みを切り上げた。地震速報が出てなくても、ここだけ地盤が緩いということも有り得る。テトはザックを背負い、ポケモンたちをボールに戻して、最後にお世話になった岩の表面を撫でた。
 岩の表面は多角形を寄せて、敷き詰めたようだった。多角形と多角形の間の大きな溝をなぞる。テトの手が丸ごと収まるような鈍角の溝の中は、少し湿っていて気持ちが良かった。テトは苦渋の思いで岩から手を離した。
「じゃあね、ばいばい」
 ふっと自然に漏れた言葉に、自分で疑問に思うこともなく。少年テトは山小屋に向けて出立する。
 それからたっぷり二時間ほど経ってから、岩を割って、中から一回り大きな岩のポケモン・ゴローニャが姿を現した。
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